慢性咳嗽(がいそう)とは、簡単に言うと『長引く咳』ということです。
どの程度『長引く』と慢性咳嗽というかと言いますと、医学的な定義では”8週間以上続く咳”とされています。
しかし、日常的な診療では、8週間、つまり2か月以上咳が続く前にクリニックを受診される方がほとんどです。
多くの方が3〜4日咳が続くのは風邪か気管支炎かと思われて、せいぜい7日間くらい続けば治まるだろう、でもそれ以上続くと何か病気が潜んでいるのではないかと心配されてクリニックを受診されます。
医学的な定義である『8週間=2か月間』治療を受けないでそのまま様子を見られている方は、比較的珍しいと言えます。
慢性咳嗽の原因として、一般的に考えられている疾患として以下の病態が考えられています。
ここでは、一般的に原因として多い病態として”咳喘息” ”アトピー咳嗽” ”感染後の咳”について、説明します。
咳喘息とは、下記にありますように、ゼーゼーやヒューヒューといった喘息特有の症状や呼吸困難を伴わない咳が続く病気です。
咳の特徴としては、寝る前や夜に悪くなり、風邪や冷たい空気を吸った時などに悪くなります。
咳喘息に特異的な検査はなく、胸部レントゲンや呼吸機能検査を行っても、正常となります。唯一の診断は、気管支拡張薬の吸入で症状が改善することです。
治療は喘息と同じです。将来的に咳喘息の方の30%が喘息に移行してしまうという報告があり、注意が必要です。
アトピー咳嗽は、”アトピー”体質のある人に多く、ここで用いられる”アトピー”とは『体質的にアレルギー体質がある』という意味です。
症状は喉のイガイガ感を伴う空咳で、昔でいう『喉にエヘン虫がいる状態』と言えます。寝る前に咳が出たり、クーラーなどの冷たい空気を吸った際に良く起こります。
元々アトピー性皮膚炎があったり、家族内に同じような症状があった人がいる方が多いのも特徴です。
治療は、吸入ステロイド薬と花粉症の時などに使う抗ヒスタミン薬の内服です。
感冒症状があってから2〜4週間経っても咳が治らない場合には、『感染後の咳』が考えられます。
胸部レントゲンを撮っても異常がなく、呼吸機能検査でも異常は認められません。また、気管支を広げるお薬を吸入しても、症状の改善が得られないのが特徴です。
治療は吸入ステロイドが効果的です。
主に呼吸器内科専門医・指導医が診療にあたります。
当院には、たくさんの『慢性咳嗽』の患者さんが来院されます。多くの方が”咳止め”だけの治療を受けていて良くならない、と仰います。
咳が長引く場合は、肺の腫瘍や結核などの除外も必要です。咳が続く場合には、ぜひご来院下さい。