睡眠時無呼吸症(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群:SAS(サス)とは、文字通り睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。我われが寝ている時は全く呼吸が止まらないことはなく、病気がない人でも呼吸が止まってしまうことがあります。
では『どの程度寝ている時に呼吸が止まるとSAS』となるのでしょうか?
それは、
- 睡眠中に呼吸が10秒以上止まっている回数が一晩(7時間)に30回以上
- 睡眠中に無呼吸、または低呼吸の回数が1時間あたり5回以上
SASの原因は?
SASの原因は、空気の通り道である上気道の狭窄や閉塞によって起こります。上気道の狭窄を起こす病態として、以下の疾患が挙げられます。- 肥満
- 顎が小さい
- 扁桃腺の腫大
- 舌が大きい
- その他、顔の構造学的異常
日本人の特徴
欧米では、SASの多くの原因は肥満とされています。しかし、日本人のSASの特徴は“やせ形で比較的顎が小さい方のSASが多い”ということです。顎が小さいと、上気道が狭くなるため、SASになりやすいとされています。なぜSASがあるといけないのか?
SASがあると十分な睡眠がとれなくなってしまいます。寝ているうちに上気道が狭窄すると呼吸ができなくなりますので、その分、体に酸素を取り込めなくなってしまいます。その結果、深い睡眠をとることができなくなってしまい、結果的に浅い睡眠だけになってしまいますので、脳や体が十分に休むことができなくなってしまいます。SASの方は睡眠時間は十分に取れているのですが、寝ている時は実は体が休めてませんので、いつも体がだるい、何となく眠いという症状が出てしまいます。仕事も忙しいことも相まって体は更に疲れてしまい、休みの時にまとめ寝や寝だめをしてしまいます。しかし、これが逆効果! 長く寝るとSASによる無呼吸の時間も増えますので、結果的には体は休まらず、慢性的な疲労が溜まってしまうのです。
急性期のリスク
- 起床時の頭痛
- 頭重感・倦怠感
- 集中力・記憶力の低下
- 交通事故
- 生産性の低下、作業ミス、労働災害
慢性期のリスク
- 高血圧
- 糖尿病
- 心不全
- 心血管障害
- 夜間突然死
- 脳梗塞
- 認知障害
SASの診断について
SASの診断には、以下の2つの方法があります。- 簡易検査
外来で入院することなく、検査を行い、診断します。指先に酸素濃度を測るセンサーと、胸に呼吸の状態をみるバンド、そして鼻に寝ている時の呼吸の状態をみるためのチューブをつけて寝ます。この検査で無呼吸・低呼吸指数が1時間に40回以上で、SASの症状が明らかな場合は、CPAP(シーパップ)治療(後述)の適応となります。 - PSG検査
脳波を測定するため、1泊入院による検査となります。簡易検査でつけるセンサー以外に、脳に電極をつけて睡眠の状態を測定しながら、無呼吸・低呼吸指数を測定します。
SASの治療
簡易検査やPSG検査で軽症と診断された場合には、マウスピースによる治療もありますが、ここでは主にCPAP(シーパップ)治療について説明します。 CPAP(シーパップ)治療とは、鼻にマスクをつけて、器械で気道内に空気を送ることによって圧力をかけて、睡眠中に狭窄もしくは閉塞した気道を圧力で広げて、呼吸を楽にできるようにするものです。(下図) CPAPの説明をすると、皆さん写真を見て驚かれますが、一旦治療を開始すると、多くの方が抵抗なく治療を開始・継続することができます。SASの効果
CPAPの効果については、患者さんごとに異なりますが、ほとんどの方で日中の眠気やだるさがなくなってきます。CPAPの治療効果を"朝起きた時に頭がすっきりし、これまでとは別世界のようだ"と期待されている方もいらっしゃいますが、実際にこのような経験をされる方は1割以下の印象です。多くの方が、昼間の眠気が少なくなった、電車に乗っていて眠らなくなった、会議中も起きていられるようになった、といった症状の改善が得られています。 また、CPAPに慣れるまでには3か月程度かかることが多いようです。長い人は半年つけてようやく慣れてきた、という方もいらっしゃいます。CPAP装置をつけることでむしろ全く眠れなくなってしまった方は中止せざるを得ませんが、治療にて症状の改善が得られているようでしたら、慣れるまで付けられた方が良いと思います。 CPAP装置は非常に静かでコンパクトです。一緒に寝ていた人から"いびきと比べると、はるかに器械の方が静か"と言われる方が多いのが現状です。また、出張にも持って行っている患者さんもたくさんいらっしゃいます。
生活習慣の改善も重要
冒頭に『日本人のSASの方は、欧米に比べて痩せている人が多い』と説明しましたが、それでも肥満のSASの方が日本でも多いのが現状です。 SASの患者さんは、メタボリック症候群などの合併症を持っている人が多いため、SASのみの治療では不十分です。高血圧がある人は塩分制限をしたり、高脂血症、糖尿病がある人は、食事療法も同時に行うことが、とても重要になってきます。CPAP治療中の注意点
SASと診断され、CPAP治療が必要となった場合には、保険で治療可能です。CPAP装置はすべて保険で賄われます。SASのみの1か月の治療費は約5,000~6,000円です。 ここで注意が必要なのは、CPAP治療中の方は『必ず月に1回は受診をしなくてはならない』ということです。月に1回の受診がない場合、保険治療適応外となりますので、全額患者さんの自己負担で治療を受けなくてはなりませんので、ご注意下さい。CPAP装置に関しては、レンタルをお勧めします。購入するとかなり高額ですし、年々装置もモデルチェンジしてきますので、レンタルし、最新のモデルを使用する方がベターと言えます。
浅草クリニックでの治療について
浅草クリニックは台東区内でも随一のCPAP治療数を誇り、呼吸器内科専門医である内山医師ががCPAP治療を担当します。SASが気になる方や、他院でCPAP治療を受けていたが、当院で治療を継続したい、という方は、一度ご相談下さい
参考文献
http://659naoso.com/
http://www.kaimin-life.jp/l