帯状疱疹予防ワクチン

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ワクチンを接種して、帯状疱疹の予防を!

台東区に住民票のある方へ
 台東区に住民票のある50歳以上の方には、接種に関して補助があります。詳細はページの最後をご覧下さい。


帯状疱疹とは?

 免疫が低下すると体内の水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化して、皮膚に赤いブツブツがでる病気です。
 日本人の15歳以上の水痘抗体保有率は90%〜100% 1)で、多くの方の体内にウイルスが潜伏しています。
 リスクの高い方は予防をお勧めします。
 
 帯状疱疹はとにかく痛く、全身どの部位にも発現します。症状の多くは上半身にあらわれますが、顔や目、頭などにあらわれることもあります。再発リスクは5〜10%で、発症を繰り返す方もいます。
 

なぜ帯状疱疹になる?

 原因は、体内の水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスが活動を再開するためです。
 治療薬を服用しても3〜5人に1人が帯状疱疹後神経痛(PHN)に悩みます。
 子どもの頃に、このウイルスにはじめて感染すると、水ぼうそうになります。水ぼうそうになってブツブツが消えた後も、実はウイルスは脊髄から出る神経節という部位に潜んでることがあります。
 通常は体の免疫力によってウイルスの活動が抑えられているため発症することはありませんが、免疫力が低下するとウイルスは再び活動、増殖しはじめます。
 ウイルスは神経に沿って皮膚へ移動し、帯状に痛みや発疹(ほっしん)が出る帯状疱疹を発症します。
 
 日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスが体内に潜んでいて1)、”80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になる”といわれています2)。



1)国立感染症研究所: 病原微生物検出情報(IASR).「水痘抗体保有状況」https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/8132-varicella-yosoku-serum2017.html, 2019年3月13日確認]
2)Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017

帯状疱疹のリスク

 家族歴、加齢、(特に出産経験のある50〜60代の)女性、基礎疾患ある方、免疫を低下させる病気・治療を受けている方、ストレス、睡眠不足、不摂生、(50歳以上で)コロナ感染した方など。

帯状疱疹の発症率は50代から急増する

 50代、60代、70代と発症率は増加し、帯状疱疹になった患者さん全体のうち、約7割が50歳以上です※。
 性別で帯状疱疹を発症する人数をみると、女性に多いことがわかります。
 特に高齢で発症すると、顔面に出た場合、顔面神経麻痺を起こすことがありますので、女性の方は注意が必要です。

                  https://taijouhoushin-yobou.jp/course.htmlより引用

                       ※外山望. 日臨皮会誌. 2019;73(5): 186-189

帯状疱疹の合併症 ”帯状疱疹後神経痛(PHN)

 神経が損傷されることで、皮膚の症状が治った後も、痛みが残ることがあり、3か月以上痛みが続くものを帯状疱疹後神経痛(PHN)とよびます。
 PHNの痛みは、「刺すような痛み」や「焼けるような痛み」と表現され、数年にわたって痛みが改善されないこともあります。
 50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、約2割がPHNになるといわれています。
 特に、高齢者ではリスクが高く、PHNにならないためにも帯状疱疹の早期発見・早期治療、またはワクチンでの予防が大切です。

帯状疱疹にならないためには、どうしたら良い?

 体調管理も重要ですが、加齢と共に免疫が低下するので、ワクチン接種による予防がデータ上一番効果的です。

帯状疱疹予防ワクチンについて

帯状疱疹の発症率を低減させ、重症化を予防し、間接的にPHNの発症リスクを低減させます。

帯状疱疹予防ワクチンの接種対象となる方

帯状疱疹ワクチン(シングリックス)を接種できる方は、以下の通りです。

・50歳以上の方
・18歳以上の方で、帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる方
     
「18歳以上の方で、帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる方」とは、以下の方が該当します。
・病気または治療により、免疫不全である方、免疫機能が低下した方、または免疫機能が低下する可能性がある方
・上記以外で、医師が本剤の接種を必要と認めた方

帯状疱疹予防ワクチンについて

 接種する予防ワクチンには2種類あります。
 それぞれ違いがありますので、接種を希望される際には、医師に相談して選択してください。
 当院では、有効性の観点から「シングリックス」を推奨します。


ワクチンの種類 シングリックス
(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン)
ビケン
(乾燥弱毒生水痘ワクチン)
対象者 ・50歳以上
・18歳以上の全年齢(帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる方)
・50歳以上
種類 不活化ワクチン 生ワクチン
接種回数 2回(1~6か月間隔) 1回
接種方法 筋肉注射 皮下注射
発症予防効果 50代:96.6%
60代:97.4%
70代以上:97.9%
(どの年齢でも同程度の効果)※1
50代:69.8%
60代:63.9%
70代以上:37.6%
(加齢と共に効果が低下する)※2
帯状疱疹後神経痛に移行するリスク軽減 ・50歳以上:100%軽減 ※1
・70歳以上:85.5%軽減 ※1
66.5%軽減 ※3
効果の持続期間 10年以上 ※1
(11年以降は試験中)
3~5年程度 ※4
(個人差あり)
主な副反応
(添付文書より)
接種部位の痛み、赤み、腫れ、全身の筋肉痛、疲労、頭痛、発熱、悪寒など 接種部位の痛み、赤み、腫れ、全身の筋肉痛、疲労、頭痛、発熱、悪寒など
     

※帯状疱疹予防ワクチンの2剤の違いについての表のプリントアウトはこちら

1)国立感染症研究所, IASR Vol. 39 p133-135: 2018年8月号
※1 国際共同試験Shingrix Zoster-006・022・049試験
※2 ZostavaxのSPS試験(50歳代はZEST試験)国内での有効性について試験を行っていないため、本質的に同じワクチンとされているZostavaxの試験結果から引用
※3 Engl J Med,352:2271-2284,2005
※4 Clin Infect Dis. 2012;55(10)1320-1328

副反応について

シングリックスの場合
 ワクチン接種後7日間に起こった主な副反応としては、注射部位の痛み78%、赤み38%、腫れ26%という結果になっています。
 全身性の副反応では筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%、胃腸症状13%です。
 これは体の中で強い免疫をつくろうとするためといわれており、2日~3日で多くの副反応は弱くなっていきます。


ビケンの場合
 ワクチン接種による疼痛や腫れなどの一般的な副反応以外に、水痘ワクチンに特異的な副反応としては接種後1-3週間後に発熱や、2-3%に全身性の水痘様発疹がみられることがあります。副反応がでた方は、早めに当院にご相談ください。

 
 副反応が強い方は、市販のアセトアミノフェンやロキソニンを飲んでも構いません。
 解熱鎮痛剤を飲んでも、ワクチンの効果が落ちることはありません。

接種後の日常生活での注意点

  • 接種部位は清潔に保つ
  • 接種当日は激しい運動は控える
  • 接種部位をこすったりもんだりしない
 接種した当日は、お風呂は入っていただいてかまいません。
 接種後1週間は副反応の出現に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかに当院にご相談下さい。


接種できない方

 「シングリックス」の場合
  • 基礎疾患や病気の治療等により免疫機能が低下した方においても接種可能です。
  • このワクチンに特有な接種不適当者はありません。
「ビケン」の場合
  • 生ワクチンのため、免疫機能に異常のある疾患を有する方、及び免疫抑制をきたす治療を受けている方には接種することが出来ません
    (例:抗がん剤治療や移植手術を受けた方など)


コラム

二度となりたくありません!

 帯状疱疹になった方からのお言葉です。
 帯状疱疹にかかると、服があたったりしただけで”ピリピリ”や”ズキッ”とした不快な痛みが続きます。
 火傷(やけど)のただれと例える方もいます。
 寝返りを打っただけでも痛みが走るため、夜に何度も起きてしまいます。
 また、家族の方や同僚の方が帯状疱疹になって大変な思いをされている姿をみて、絶対に自分もなりたくないと思った、と仰います。
 帯状疱疹になった方にワクチンの話をすると、ほとんどの方が接種を希望されます。
 お勧めは、帯状疱疹になってから接種ではなく、50歳を過ぎたら接種を検討されることです。
 ご自身はもちろん、50歳を過ぎられたご家族やご友人にもお勧めされると宜しいかと思います。


帯状疱疹後神経痛(PHN)以外の合併症について教えてください

 帯状疱疹は頭部から顔面に症状がでることもあり、目や耳の神経が障害されると、めまいや耳鳴りといった合併症がみられることがあります。
 重症化すると、視力低下や失明、顔面神経麻痺など、重い後遺症が残る危険があります。
 経験的には、年齢が上がるにつれて、帯状疱疹は顔に近い方に発症していきます。


帯状疱疹はうつる可能性はありますか?

 帯状疱疹は体内に潜伏しているウイルスが原因で発症するため、他の人から帯状疱疹としてうつることはありません。
 ただし、まだ水ぼうそうにかかったことがない人は、ウイルスの感染で水ぼうそうを発症することがあります。
 水ぼうそうの入院患者のうち、約3割は帯状疱疹が感染源であったと報告されています。


帯状疱疹に男女差はありますか?

 上の図にありますように、女性は、男性に比べて発症率が高いというデータがあります。
 出産経験のある女性は、50~60代で授乳・陣痛・分娩に関する部位での発症に注意です。
 女性で顔面神経に発症すると、場合によっては顔面神経麻痺が残ります。顔面神経麻痺によって目が閉じなくなったり、水を飲むと口角から水が漏れたりと、かなり生活の質が低下します。
 それ以上に顔面の左右の表情が変わりますので、美容的に悩まれる方が多いです。
 いったん帯状疱疹による顔面神経麻痺をきたすと、回復が難しくなりますので、ワクチンによる予防が重要となります。


帯状疱疹にかかったことがありますが、ワクチンを接種できますか?

 はい、接種できます。
 1度かかった人でも、体の免疫力が低下すると再びかかる可能性があり、帯状疱疹ワクチンの接種をお勧めします。
 ある研究では、帯状疱疹かかった人の6.4%(女性7.8%、男性4.5%)は、また帯状疱疹になるという研究結果があります。
 またかかると大変、という方が多いので、帯状疱疹ワクチンを接種しておきましょう。


シングリックスは、他のワクチンと同時に接種しても良いですか?

 シングリックスは、不活化ワクチンです。医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができます。
 同時に接種を希望しない場合は、翌日から接種ができます。
 当院としては、それぞれのワクチン接種から1週間開けての接種をお勧めしています。
 (COVID-19ワクチンを除く)


なぜか金曜日に多いような

 帯状疱疹の患者さんの傾向をみてみると、金曜日に患部にピリピリした違和感がでたり、ブツブツがでたりして受診される方が多い印象です。しかも、午後の最後の最後の受付が多いです。
 月曜日は違和感よりも、ブツブツがでて受診される方も多い印象です。
 帯状疱疹は、肉体的・精神的ストレスがきっかけとなって免疫力が低下して発症すると考えられているため、月曜日から働いている方は金曜日に疲れがド~っとでて帯状疱疹を発症するのかもしれません。


シングリックスとビケン、どっち?

 当院では、シングリックスをお勧めします。
 その理由は、シングリックスの方が帯状疱疹の発症予防効果が高いこと、帯状疱疹後神経痛の予防効果が高いことです。
 問題はその値段ですが、帯状疱疹後神経痛を発症すると、痛みがあって日常生活に影響がでたり、夜眠れなかったりとかなり不快な思いをしなくてはなりません。
 また、神経痛が残ると、長い間通院治療が必要です。
 シングリックスは、これらの発症を予防することができます。
 予防効果もビケンは3~5年に対して、シングリックスは約10年と2~3倍の効果期間があります。
 これらのことを総合的に判断して、シングリックスの方をお勧めしております。

台東区に住民票のある方へ
台東区では、帯状疱疹予防ワクチン接種費用の一部補助が利用できます。
補助を希望される方は、台東区のホームページから電子申請もしくは台東保健所保健予防課予防担当にお電話で申請が必要です。
詳しくはこちらをご覧ください。
※台東区以外でも接種補助を受けられる自治体が多数ございます。補助につきましては、住民票のある区市町村にお問い合わせください。


帯状疱疹予防ワクチンは、(基本的に)予約が必要です
ご希望の方は、お電話、メールで予約、もしくは診察の際にお伝えください。
(シングリックスの在庫がある場合、来院当日に接種することもできます。ご相談下さい。)

電話での予約:03-3876-3200

メールでの予約:「お問い合わせフォーム」からお申込み下さい。

※お問い合わせフォームからの予約の際のご注意点につきまして

”シングリックス”のみのご予約となります(ビケン(生ワクチン)の予約は承っておりません)。
・「お問い合わせ内容」に”帯状疱疹ワクチンの予約”と記載をお願いします。
・ワクチンの取り寄せに3日ほど要しますので、入力されてから3日以上経ってからご来院ください。
・接種の際は、診療時間内にご来院ください。
・接種で来院される時に、区からもらった書類を必ずご持参ください。書類がない場合、補助を受けることができません。
・接種の予約は承っておりません。受付順にお呼びいたします。
・入力されてから2週間以上来院されない場合は、自動的にキャンセルとなりますのでご注意ください。